REPORT:PIRELLI Super Taikyu 2020 Series 09/05-06/2020

PIRELLI Super Taikyu 2020 Series NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース

7月末の公式テストから1ヶ月。Super耐久2020シリーズ公式戦の幕開け、NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レースがFUJI SPEED WAYで開催された。

このレース、20号車のドライバーラインナップは、木下選手と砂子選手、鈴木選手のレギュラー3名に加え、BMW Team Studieから荒選手、ビザの問題で来日が叶わなかったJorg Muller選手の代役としてJP.オリベイラ選手を加えた計5名。レギュレーション上、Aドライバーを鈴木選手が担当。B,C,D,Eドライバーを4名のベテラン勢が務める。

練習走行

練習走行セッションは木曜日に午前・午後・夜間の3回に分けて、それぞれ1.5時間ずつ実施。7月末の公式テストでは性能調整の厳しさに苦しんだSS/YZ Studie BMWだが、この練習走行ではいずれのセッションも光る速さを発揮。翌日の予選に向けて確かな手応えを掴んだ。

予選

このレースはA,Bドライバーのベストタイム合算で予選ポジションが決まる。Aドライバーは鈴木選手、Bドライバーは荒選手の布陣で挑んだ。鈴木選手のアタックはクラス2番手の1:49.852。前のマシンとのタイム差は0.339秒。Bドライバーの荒選手はアタックラップ2周目で1:48.934のベストタイムを記録。合算タイムで堂々のクラスTOPを獲得し、ST-Zクラスのポールポジションを決めた。

決勝

朝から好天のスピードウェイだったが、マシンがグリッドに着いた14時には分厚い雲が上空を覆い始めた。

14:56、定刻通りフォーメーションラップ開始。ST-X(GT3)クラスを先頭にした隊列を率いたセーフティカーがPITレーンに向かい、レーススタート。

スタートドライバーはJP.オリベイラ選手。オリベイラ選手はST-Zクラスポールポジションからのスタート直後から快走。前のマシンを脅かすペースで周回を重ね、後ろのマシンに約30秒のギャップを構築。ルーティンのPITストップを迎えた。

2ndスティントは鈴木選手が担当。タイヤ交換を終え、燃料を満載したマシンでコースに復帰した。が、直後ついに雨が落ち始める。チームはタイヤ交換リクエストの有無を確認したが、鈴木選手はまだスリックタイヤと判断。ドライタイヤで数周周回を重ねた。しかし、その後も雨脚は徐々に強まりレースはフルコースイエロー。50km/hリミットでの走行が数周続き、続いてセーフティーカーが導入された。

ルール上、フルコースイエロー中のPIT作業は禁止されている為、鈴木選手はこのセーフティーカーに切り替わったタイミングでウェットタイヤに交換。このフルコースイエローとSC導入タイミングでポジションをクラス3番手に下げた。セーフティーカーはその後一旦解除されたが、雨脚はさらに強まり再びセーフティーカー導入。

 70km/hでもハイドロプレーニングが発生するコンディションで、レースはこの時点で赤旗中断。全てのマシンがコース上に停車し、天候回復をまった。

セーフティーカー先導でレースが再開したのは22:30。セーフティーカーは35分間に亘って隊列を率いた後PITロードへ向かい、レースがリスタートした。

チームはこの35分間のSC先導中にルーティンのPIT INを実施。3rdドライバーを務める砂子選手は、タイヤ交換・燃料補給を受けたマシンでコースに復帰した。レースはリスタートしたものの、雨脚は依然として弱まらない。再びセーフティーカーが導入されたが、ST-Z(GT4)クラスTOPと2番手砂子選手の間に入ったため、この時点でギャップが約1周に開いてしまった。3rdスティントも半ばを過ぎた頃、セーフティーカーが戻りリスタート。砂子選手は良いペースでラップを刻み、約1周のギャップを30秒台まで短縮。ルーティンのPITに向かい、4thドライバーの木下選手にマシンを託した。

木下選手ドライブでマシンがコースに戻った直後、雨脚が強まりフルコースイエロー。続いてセーフティーカーが導入された。木下選手はこのタイミングで急遽PIT IN。あらゆる状況に対応出来る様、燃料を積んで再びコースに向かった。雨脚はその後も弱まらず、セーフティーカーは戻らない。全てのマシンにレース中義務づけられる10分間のメンテナンスタイムの好機とみたチームは、予定を早め木下選手にPIT INをコール。マシンは一旦PITに入り、ブレーキ系他メンテナンスと給油、タイヤ交換を済ませ、荒選手のドライブでコースに復帰した。

2番手荒選手とクラストップの間には周回遅れを含めた12台のマシン。ギャップは25秒。セーフティーカーがPITレーンに向かいレースがリスタートすると、荒選手は良いペースで周回を重ね、瞬く間にTOPに肉薄。オーバーテイクすると、ST-Zクラストップ、全体の4番手にポジションを上げた。荒選手はその後もペースを崩さずポジションをキープ。一時、クラス2番手に12秒のギャップを築いたが、雨脚が強まりまたもやセーフティーカー導入。フレキシブルに作戦を取れる様チームは一旦荒選手を呼び込み、給油を済ませマシンをコースに送り出した。セーフティーカーがPITロードに向かった時の荒選手のポジションはクラス2番手。リスタート後、荒選手は再び前のマシンを追う展開になったが、雨脚が強まりまたもやセーフティーカー導入。天候はその後も回復せず、荒選手はこのスティントを2時間半に亘って担当。次を担当する鈴木選手にステアリングを渡した。

鈴木選手のドライブで数周数回を重ねたところで、雨のために9回目のセーフティーカー導入。幸い雨脚は早々に勢いを無くし、レースはリスタートした。鈴木選手は着実に周回数を重ね、再度導入されたセーフティーカーのタイミングで続くJP.オリベイラ選手にマシンを委ねた。

オリベイラ選手ドライブでコースに復帰後もセーフティーカー先導は継続。ようやく天候が回復しレースリスタートと同時に青空も顔を出した。急速にドライ方向に向かうコンディションを確認したチームは、オリベイラ選手に予定を少しはやめたPIT INを指示。燃料補充とスリックタイヤへの交換を終えた選手は、ドライバー交代すること無く、再びコースに向かった。後半スティントもJP選手は着実に周回数を消化。3時間に及ぶダブルスティントを完璧にまとめ砂子選手にマシンを繋いだ。

砂子選手はコース上の所々で雨が落ち、目まぐるしく変わるコンディション下で着々と周回を重ね、ルーティンのPIT INで自身の担当スティントを消化。木下選手が待つルーティンのPIT作業に向かった。

 給油とタイヤ交換を終えたSS/YZ Studie BMWは木下選手のドライブでコースに復帰。順調に周回を重ねていたが、スティント中盤に雨が落ち始めた。チームはタイヤ選択を木下選手に確認。木下選手はドライ継続をチョイスし、チームも天候好転と読んだ為、PIT INせず走行継続を選択した。コースはその後徐々にドライアップ。ウェットタイヤを選択したマシンが再びタイヤ交換に向かう中、木下選手は当初の予定どおりPITへ向かった。受け取った時点のSS/YZ Studie BMWはクラストップから2周遅れのクラス2番手。ウェットコンディション下での木下選手の力走により、SS/YZ Studie BMWはPIT戦略でクラスTOPと同一周回まで迫った。

このレース、最後のスティントを担当するのは、『セカイノアラ』事、荒聖治選手。クラスTOPのマシンは、最後に給油を伴うピットストップが必要な為、状況によってはチェッカー前に捉える事も可能。荒選手は最大限のハードプッシュで予選タイム並みの1分49秒台のラップを連発。TOPとのギャップを1周につき3秒前後縮め続ける中、ライバルはついに最後のPITストップへ向かった。

このPIT作業によって、双方のギャップは1分少々まで詰まった。荒選手はここからの逆転を狙い、ハードな走りを続けたが、レース残り時間30分を迎えようとしたタイミングでタイヤが急激にグリップダウン。そのまま走行してもオーバーテイクは不可能と判断したチームは、最後のタイヤ交換と給油実施を選択。NewタイヤにSS/YZ Studie BMWの速さには目を見張るものがあったが、TOPを捉えることは出来ず、クラス2位でこのレースを終えた。

■ 鈴木康昭 総監督

初めてのSUPER耐久、そして初めての24時間レースはクラス2位という結果で終えた。これがニュルブルクリンク24時間レースでも、ル・マン24時間レースでも同じ事を唱えるでしょう。

「二位はビリだ。」

初めて聞く方にはなんて乱暴なと思われるでしょうが、これはバレーボールの監督をやっていた亡父の言葉であり、そんな父に育てられた私なのでお許し下さい。最も悔しさの大きい順位が二位。それは24時間、いや正確にはその事前の準備も含めて32時間寝ずに戦った疲労感がその想いを更に強め、深めました。

木下隆之、砂子塾長、そして、レギュレーションに伴い最強のアマチュアドライバーである鈴木宏和をレギュラードライバーに揃え、今回の24時間戦においてはSUPER-GTを共に戦う荒聖治とJPオリベイラをヘルプドライバーに加えた強靭な体制は勝利を目的にしたもの以外の何者でもありませんでした。ポールポジションを獲得し、24時間のレース中二度に渡りTOPの座を獲得していたにも関わらずのこの順位には正直落胆しかありません。理由は24時間レースに対する戦略の脆弱さと、無知さ。優勝したエンドレスチームは昨年のチャンピオンでもあり、その戦い方には称賛をお送りするほど素晴らしいものでした。

ドライバーそして完璧な作業をこなしたメカニック。そして応援して下さった皆様には心よりお詫び申し上げます。今はそれ以上のコメントは控えさせていただきます。

 ■ 山本隆一 チーム代表

お疲れ様です、エスエスワイズレーシング、チーム代表の山本です。富士24時間耐久レース、なんとか終わりました。チームの皆様、お客様、ファンの皆様、たくさんの方々の力をお借りして、まずはレースを完走しきれた事を御礼申し上げます。内容につきましては、自分そして、チームメンバーもそれぞれ反省点がありますので、満点と言う訳にはいきませんが、初戦を二位というポジションで終われた事に感謝いたします。悪天候に見舞われ、勝てたレースを落とした事は痛いですが、今回の反省点を次のレースに繋げるのみです。また次戦も応援のほど、よろしくお願いいたします。

 ■ 片野田 洋介監督

初のレース参戦、初の24時間スーパー耐久、初のチーム監督、初のポールポジションっ!!全てが初体験な事ばかりでとても勉強になりました。チーム監督としては初心者ですので力不足を痛感した一戦ではありましたが、チームとしては初の24時間で2位という結果は手答えを感じる事が出来た一戦でした。我々を応援頂いた沢山の方に心から感謝申し上げます。次戦のRd.2 SUGOに是非ご期待下さい。

 ■ 木下隆之選手

必勝体制で挑んだスーパー耐久開幕戦だった。マシンは抜群の速さを披露、ポールポジションを獲得した。スタートから飛び出したJPが操るM4GT4のスピードにはAMGもアウディもついてくることができない。そこまでは予定通りだった。だが、サーキットを包む空は気まぐれで、断続的にスコールを降り注ぐ。その度にセーフティーが発動、運悪く我々の快進撃を阻んだ。結局はピットタイミングの悪さが最後まで響き、惜敗の2位。マシン速かっただけに、悔しさの残るレースでした。

 ■ 砂子智彦選手

チーム発足、初戦の大きな山を無事終えて少しホッとしています。このウィークは全てが順調でした。速さ、タフネス、スタッフ、メカニック、ドライバーも完璧な仕事をしました。ただ少しの運が足りませんでした。24時間を勝つ為の重要なファクターです。それは、次戦へとっておく事にします。皆様、応援ありがとうございました!

 ■ 鈴木宏和選手

チームの皆さん、応援してくださった皆さんありがとうございました。チーム発足初のレースが24時間耐久という長丁場でしたが、準優勝を獲得できて嬉しい気持ちと優勝したかったという悔しい気持ちがあります。予選は、ポールポジションも獲得できて良い流れでしたが、天候に振り回されて運が少しだけ足りなかったのかもしれません。チームに合流して初めてのレースでしたが、チームのスタッフの皆さん、チームのサポーターの皆さんの素晴らしい対応にチームのドライバーとして迎えていただき、本当に嬉しいです。僕自身もまだまだ成長して行きますので、今後とも応援をよろしくお願いします。

 ■ 荒聖治選手

まずは、スーパー耐久シリーズが無事に開幕した事を嬉しく思っています。2020年シーズンをポールポジションからスタートできて、良いスタートをきれたのではないでしょうか?結果は2位と悔しさが残るレースになってしまいましたが、STZクラスの魅力とM4GT4の高いパフォーマンスを感じる事ができました。それから、不安定な天候にも関わらず、応援に来てくれた皆さん有難うございました。また皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!

■ JP.オリベイラ選手

The team and all drivers did a great job all weekend. Our car was strong and we had the pace to win, but it was difficult to make the perfect strategy with so many SC and FCY interventions. Overall I’m really happy to have worked with Team Studie and everyone involved. Thanks to the team for this great memory!

チームとすべてのドライバーは週末を通して素晴らしい仕事をしました。 私たちのクルマは強く、勝てるペースはありましたが、SCやFCYの介入が多すぎて完璧な戦略を立てることは困難でした。 全体として、Team Studieや関係者全員と一緒に仕事ができて本当にうれしいです。 この素晴らしい思い出をチームに感謝します!